2006年03月28日

ウィラポン・ナコンルアンプロモーションvs辰吉丈一郎

w_t3先日、ウィラポン選手の壮絶なダウンシーンを見て思い出し、保存してあるこの試合のビデオを見た。

辰吉の王座陥落後、再びウィラポンに挑んだ試合である。
1999年8月29日。

久しぶりに入場前の控え室のシーンから、退場して控え室に戻るまでをぶっ通しで見たが、本当にこれは映画かドラマのように感動する。

王座陥落後に亡くなった父、粂二さんをガウンに背負い、「死亡遊戯のテーマ」に乗って入場して来る辰吉がまずかっこ良過ぎる。

「父ちゃん」という文字と粂二さんの遺影。
ダサいとか浪花節だとかそういう批判はもうどうでもいい。
この時点でとにかくたまらない気持ちになる。

そしてウィラポン入場。
入場曲はMOTLEY CLUEのLooks That Kill。

試合結果を知ってから改めて見ると、このウィラポンの圧倒的な自信に満ちた入場シーンは不気味さを感じる。

試合は1、2Rは淡々と流れるが、3Rから突如の打ち合い。
というよりこの時既に辰吉は打たれ過ぎている。

w_t2仕掛けたのは辰吉だったが、ウィラポンの強さは相当なものだった。

先日、ウィラポンは変わってないと書いたが、この時の彼を見ると7年近い月日を感じてしまう。

4、5R、ウィラポンは手数が少ない。
当時の実況を聞いていると、この時セコンドもウィラポンに休んで様子を見ろという指示を出していたようだ。

しかし後年のインタビューで、ウィラポンはこの時点で手加減をしていたと語っている。

6R、辰吉はさらに打たれ、朦朧としているのが画面からも伝わって来る。
この時点で見ている僕は、痛さ、辛さ、悲しさ、そして訳のわからない感動にやられている。

そして運命の7R、手数が明らかに少なくなった辰吉にウィラポンが戸惑っている。
このラウンドでとどめをと考えていたのだろうが、これ以上打っていいのだろうかという雰囲気が見て取れる。

ボクシングファンなら誰もが知っていると思うが、この時ウィラポンはレフリーの方に一瞬チラッと視線をやる。
「止めなくていいのか?」という目だ。

そして強烈な連打もないまま、これ以上無理だと判断したレフリーに止められ、試合は終わった。

止めるレフリー、投げられたタオル、その瞬間グタッと倒れそうになる辰吉、それを支えようとしたウィラポン、全てがドラマであった。

打たれ過ぎて記憶もまばらな辰吉が「なんで負けたん?」とセコンド陣に聞いているのが痛々しい。
まだ立っていたじゃないか、やれたじゃないかということのようだった。
悔し泣きをする辰吉を見るとこちらも涙腺をやられずにはいられない。

その後チャンピオンウィラポンと抱き合い、手を上げて称える辰吉。
「父ちゃん」のガウンを羽織り、さらにウィラポンを抱きかかえる辰吉。

w_t4そして会場のファンに手を合わせ頭を下げ、勝てなかったことを謝りながら辰吉は控え室へと向かう。

その間ずっと鳴り止まないタツヨシコール。

ラストの控え室近くの映像は、傷だらけの辰吉を真正面から映しているが、これがなんともかっこいいのだ。

生放送だったから実況以外に変な演出は一切ない。
しかしドラマ以上のドラマがそこにあった。

ウィラポンと辰吉のこの試合、ボクシングとしてレベルが高いかどうかの話は専門家におまかせするが、僕には忘れられない試合である。


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